山に行って見ると、時折二股にわかれて生い立った木が、互いに捻れからまって成長しているのを見かけることがある。是は山の神が詰(12月)の12日に、自分の領分の樹の数を算用するときに、〆て何万何千本という時の記号に、終わりの木をちょっとこうして捻って置くのだそうな。だからこの詰の12日だけは、里の人は山に入ることを禁じて居る。若し間違えて山の木に、算え込まれては大変だからという。
遠野物語拾遺 95