渡し舟をこぎ続ける先は東京湾。この川はたくさんのものが混濁しているが何も映さない。川は流れているが寒くもないのに凍っているが舟はこげる。
水先人はどこかに先導する。
この川から見えてくるのは、景色と言えるものではなく、目でとらえられはしない。川の流れと景色と言えない光景の時間はまったく異なっている。
時おり川に反射する光が水面を飛び出し粒となり宙を舞う。水先人はそれを少し大きな柄杓みたいなもので川からスマートに無駄のない動きで水をすくいかけて宙を舞う光を川に落とす。
その光を吸い込んでしまうと身体が黄金色に光ってしまい、川の主のミセカケに食われてしまう。
空は薄く雲がはる。空からは何かが降る気配はない。たまに身体がほんの少し煽られるぐらいの風が音もなく吹く。浮いてしまうと心を風に持っていかれてしまうので足を舟につながれた重しをつける。木を見るとその風に流された葉は枯れ葉になる。流されたものの先は見てはいけない。

川の河川敷である人はなにかの行為をしている。ある人は市を開き口には出せないものを出店をだし売る。目を瞑っても目をそらしてもどこかしらから頭に映像だけ入る。
この川の地下用水路につながる入り口はうねり音を発しなにもかもを寄せ付けない黒く引き込まれてしまうような気がする。近づいてはいけない。ぼくはカンだが危険を察しする。
水先人はなにくわぬすべてを無視して先導して船頭は渡し舟をこぎ続ける。